「伝えるときは言わない」森保流指導哲学…元日本代表・青山敏弘さんが語る恩師の背中
サッカー・ワールドカップ(W杯)の日本代表は12日、米ナッシュビルの拠点で練習を行った。
「アジア杯」離脱を前に

元日本代表の青山敏弘さん(40)には、強く記憶に残っている出来事がある。2019年、アラブ首長国連邦(UAE)で開催されたアジア杯でのことだ。
日本は1次リーグを突破したが、青山さんは右膝を痛め、離脱が決まった。チームを離れるのを前に、ベンチの横で決勝トーナメント1回戦に向けて体を動かす仲間の姿を目に焼き付けていたところに、森保監督がそっと近づいてきた。
青山さんは、森保監督がJ1広島を指揮していた15年に最優秀選手(MVP)に輝くなど、計3度のリーグ制覇に貢献。森保ジャパン1期目はゲーム主将を託されたこともある。何かを語り合ったわけではない。隣り合い、ただじっと、ピッチを見つめた。ベテランの域に達していた青山さんは、代表選手としての戦いの幕が下り始めていることを悟っていた。「だから寄ってきてくれたのかな」
引退後は広島で指導者となった。ある試合の後、視察に訪れていた森保監督からエレベーターで声をかけられた。「選手の尻をたたかないといけないんじゃない?」。青山さんは選手に対する苦言ではなく、「あれは僕の尻をたたいていたんだ」と受け止め、発奮材料とした。

何げない一言で選手に気づきを与え、誰に対しても公平に接していた森保監督は、指導者としての道しるべだ。「日本一丸」を掲げて2度目の大舞台に挑む恩師への敬意は尽きない。「本気でサッカーを日本の文化にしたいと思っている方。応援せずにはいられないですね」(細田一歩)